■その昔は駄菓子屋の定番だったおでん

高度経済成長時代の頃、町の駄菓子屋にはたいてい、子供たちの空腹を満たす食べ物が売られていた。
当時の関西における3大メニューというと、たこ焼きやお好み焼、串カツ、そしておでんであった。この当時はまだ「おでん」ではなく、「関東煮」というノボリや暖簾を下げている駄菓子屋が多かった。子供たちは、その日のお小遣いを握りしめ、駄菓子を買うか、旨そうなおでんや串カツを買うか、大いに頭を悩ませたのである。
こういう原体験持つ子供たちは大人になると、会社帰りにちょいと一杯という時でも、おでんや串カツというパターンが多くなる。おでんは、それぐらい関西人の生活になじんできた大衆メニューなのである。昨今では、駄菓子屋の替わりに急増しているのが、コンビニのレジそばに置いてあるおでんである。寒い冬の夜、仕事帰りに立ち寄ったコンビニに、湯気をたてているおでん鍋があると、ついふらふらと吸い寄せられていく人が多いのではないだろうか。一人暮らしの若者にとっては、家庭の味を手軽に楽しむことができる、貴重な存在である。
 
 

  ■東のちくわぶ、西の牛スジ

ルーツが「煮込み田楽」だったとはいえ、現代おでんは、関東と関西で煮込むタネに特徴的な違いある。近頃では、おでんダネも多種多様にクロスオーバー化しているので、東西比較も一概にはいえないが、最も顕著なのは「東のちくわぶ、西の牛スジ」ではないだろうか。
関西のおでんでまずお目にかからないのが、あのお星さまのようなちくわぶ。関西人は「ちくわぶ」と言われても、穴のあいた丸いちくわを連想してしまいぐらい、あの独特のもちもちした食感はほとんど知られていない。
かたや、関西のおでんで必ずといっていいほど煮込まれているのが、「牛スジ」こと牛の筋肉である。竹串に刺してぐつぐつ煮ると、コクのあるいいダシが出るのはもちろん、とろけそうなぐらい柔らかくなった肉をコンニャクや大根と一緒にいただくのは、西のおでんの醍醐味である。
この肉系のタネは地域色を最も代表する部分で、例えば熊本では馬のアキレスケン、沖縄では豚足といった食材が、グツグツと煮込まれている。旅に出て、おでん屋に飛び込むと、こうした地方独特の食材に出会うことがあるので、おでんはまさに国民的な郷土料理になっていると言っても過言ではない。
 
 

  ■浪花のおでんには、クジラがつきもの

牛スジに次いで、大阪らしいおでんダネといえばクジラ。コロ(クジラの脂身)の煮込んだものは、かつては庶民の代表的なメニューだったのだが、いまではなかなか口にできない高級品になってしまった。これに、サエズリ(クジラの舌)などが揃ったおでん屋さんとなると、浪花の食い道楽にはたまらない存在である。また、タコの足を柔らかく煮込んだものも大阪では好まれる。練り物系が充実している関東に対して、肉・魚系が充実しているのが関西という傾向があるのかもしれない。
そこで今回は、クジラ系のおでんダネで有名な福島区の『花くじら北店』に取材をお願いした。店主の高山尚治さんは、「美味しいおでんをいかに安く売るか。それがホンマの庶民の味や思います」と語るおでんの達人。関西風おでんの神髄をご覧あれ。
 
 
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