大阪名物数々あれど、B級・C級グルメといえば、「どて焼き」にとどめを刺す。牛のすじ肉のあたりを串にうって、ミソ仕立てで料理したものである。東京の人が食べると、「なあ〜んだ。煮込みのことじゃん」ってよく言う。
何を言う!
そんな方がいらっしゃれば、そのまちがいを正してあげないと、あらぬ人生を送りかねないので、ここで浪花の正しい「どて焼き」5カ条をお教えします。

■ 其の1
「どて焼き」はあくまで「どて焼き」であり、「煮込み」ではない。

そうなんです。「どて焼き」は、あくまで焼いているのであって、煮込んではいない。
煮込みとは、おダシをたっぷり入れてお鍋でグツグツ煮ること。どて焼きは、ダシがこぼれない程度に縁取りをした鉄板で焼いているのである。ダシが蒸発しかけたら、こまめに追いダシをかける。
数々その現場を見たところでは、2、3分に1回はだし汁をどて焼きにかけています。だから、どの居酒屋でもたいてい専属の担当者がつきそっていて、ずっと追いダシをかけている。よくあるパターンは、隣におでん鍋があって、両方管理している労働形態だが、どっちにしろ、すごーく手間暇と人的投資がかかるメニューであるのは事実。 その作業をつぶさに観察すると、わかることがある。どう見ても、「どて焼き」は鉄板で焼いているのである。
少しでもおダシが入っているから、「それは、煮込みだよ」とおっしゃる方。「すきやき」は、醤油や酒を合わせたおダシが入っているけど、「すき煮込み」とは呼ばないでしょう?このロジック、なんかヘン?

■ 其の2
「どて焼き」はあくまで「白味噌」仕立てであり、「煮込み」のように赤味噌ではない。

「どて焼き」は、あくまで白味噌を使う。京風にいえば、西京味噌のこと。
一方の東京の「煮込み」は、赤味噌仕立てである。
だから、「どて焼き」は、クリームシチューのように白っぽい。お店によって、赤味噌も少し混ぜるところがあるようだが、あくまで基本は「白味噌」である。
だから、赤味噌の「煮込み」より少し甘いのである。

■其の3
「どて焼き」の肉は牛筋であって、「煮込み」のようにモツを使わない。

「どて焼き」は、100%牛筋を使うが、「煮込み」は、いろいろなモツを煮込んでいる。
「煮込み」は別名「モツ煮込み」とも呼ばれているが、牛筋は、本格的に煮込まないとなかなか柔らかくならない。だから「どて焼き」の牛筋は、少しかた目で、コリコリしている。この食感が、たまりまへんのや。

■ 其の4
「どて焼き」はかならず串刺しにしてある。「煮込み」のように、器に盛られることはない。

「どて焼き」は、串に打った状態でお皿に盛られてくる。注文も、「どて焼き○本」と本数で頼む。一人前だと、ふつう3本ぐらい。
一方の「煮込み」は、「煮込みいっちょう」もしくは「煮込みひとつ」と注文する。

■ 其の5
「どて焼き」は串刺しだから、「煮込み」のように豆腐も、コンニャクも、野菜も入っていない。

「どて焼き」は、あくまで牛筋のみである。「煮込み」は、コンニャクが入っていることが多い。また豆腐や野菜入りのもあり、バラエティに富んでいる。



ざっと、大阪の「どて焼き」の基本にふれてきましたが、我々にも不明の点があります。 それは、「どて焼き」の「どて」って、一体なんなの?ということです。
これは、「どて焼き」の根幹に関わり、くつがえせば、「どて焼き」の歴史が塗り替えられるかもしれない重大な点です。
結論から言うと、「どて焼き」の「どて」は、堤防である。
「どて焼き」の鉄板は、味噌ダシがこぼれないように、周囲に縁取りがあって、それが一段高くなっていて、ダシが流れ出ないように堤防の役割を果たしている。
その「どて」のある鉄板焼きだから、「どて焼き」なのだ。
みなさん、どう思われますか?
「どて焼き」の謎に挑戦してみてください。
ちなみに、名古屋にも「どて焼き」があります。また名古屋では、「どて煮」と呼んでいるところもあって、それは、串刺しにしてはいるものの、やはり鍋で煮込んでいました。これは、大阪の「どて焼き」とは別物ですね。
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